アトランティックシティ:都市のつかいすて その2



当たり前の話だけど、米国のカジノ業界はモロに景気連動するからね、景気がいいときは儲かるが、景気停滞するとひとびとの財布の紐固くなってカジノも干上がる。米国最大級のカジノリゾート倒産に至ったトランプのタジマハールカジノは、皮算用自体が馬鹿げていたが、景気後退の影響もモロに受けた。』






『都市のつかいすて』というネタ

http://onthewayinkyushu.blogspot.com/2018/01/blog-post.html

を2018年の正月に上げたが、統合型リゾートに関する諸法令の制定・改定が確実になった2018年夏、ネタ集めの為に眺めていたTwitterのある方のアカウントで共有されていた投稿で、
『都市のつかいすて』
ということを思い出したのである。

前回は筆者が西鉄電車でふらりと立ち寄った大牟田の昔ながらの商店街と『アメリカ素描』をヒントにした。
今回は米国のカジノと景気変動について示唆する投稿であり、ブルース・スプリングスティーンの『アトランティック・シティ』のことを思い出した。
ここで、司馬遼太郎『アメリカ素描』の一節を参考までに紹介しておきたい。
『アメリカにきておどろいたことのひとつは、機能を失った都市を、平然と廃品同然にしていることだった。
フィラデルフィア市を見てそう思った。
日本でいえば、大阪を廃品にするようなものである。』(『アメリカ素描』247ページ)
いわば豪儀なことができるほど国土がひろいということもあるだろう。…
資本というものの性格のきつさが、日本とくらべものにならないということもある。この社会では資本はその論理でのみ考え、うごき、他の感情をもたない。労働者も労働を商品としてのみ考え、その論理で動く。論理が、捨てたのである。凄味がある。』(同249ページ)

当邦は、どういうわけか、観光振興の意図という理由で統合型リゾート(カジノ付き)の開発を進めようとしている。
おそらく、胴元とか資本家とか建設業界とか諸々の権力者に近い者たちがインサイダーとして美味しいところを持っていく、といういつものパターンになり、あとは野となれ山となれ、という結末を迎えるのであろう。
カジノ(とスプリングスティーンの曲)で有名な米国アトランティック・シティにおける都市(というか、リゾート施設)の『つかいすて』にまつわる顛末は、余談だが、以下の記事をご覧いただきたい。
https://toyokeizai.net/articles/-/123203?page=5
『赤字のカジノ事業で儲けたトランプの錬金術』(ニューヨークタイムズの記事の日本語訳 2016/06/07)
ドナルド・トランプは、良くも悪くも、米国の資本主義のシンボルなのだと思う。
(筆者は一度も米国本土の地を踏んだことはないし、おそらくその機会はないだろうが、一度は行ってみたいと思っている)

筆者は賭け事は苦手であり、やることがあっても話のネタのためにやるくらいにしておきたいと思っている。
賭け事は、元々そういうものなのかもしれない。
そういう性質のものが社会の繁栄をもたらすことはあると思うが、政治や経済のお偉方は、派手なところばかり見てて民草のことを忘れてしまってはいないか
当邦のお偉方には、そういう悪癖があるように見えてならないのである。
先のツイッターの投稿主の指摘のように、
『景気がいいときは儲かるが、景気停滞するとひとびとの財布の紐固くなってカジノも干上がる。
ということを忘れ、ハコモノなどの業界のお偉方が一時的にせよ儲かればいいと思っていれば、その足下は怪しいのではないか。
都市丸ごととまではいかないにせよ、小さな街や村を当邦の人々はいとも簡単に『つかいすて』にできるのか。
それをお偉方の人々はどれだけ分かっているのか。

文明社会は持続性が重要だと思う。
一時の賑やかしやブームに踊ることが大事なことだと思っていないか。

『歴史は発展するものではなく、陰のように流転してゆくものではないかという儚さを感じずにはいられない。』(『アメリカ素描』261ページ)
という感覚を呼び起こす作品を生み出してきたスプリングスティーン。

『オレは仕事を探しているけどなかなか見つからない
ここでは勝者と敗者しかいない
間違ったほうに行かないようにしないと
敗者に終わった事を暴露するのは飽き飽きしてる
それで昨晩この男に会って
彼の頼みを聞いてやるんだ
今では全てが死んでいる
それが事実さ
でも恐らく
その死んだものはいつか帰ってくるさ』
【 https://kashiwayaku.net/brucespringsteen/atlantic.php より】




アトランティックシティの興亡が、当邦でも繰り返されることになるのだろうか。

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