食べ物の恨み

Takehisa Matsuda - Lifelogさん(@matsuda_take)がシェアした投稿 -
食べ物の話題を扱いますので、自分のインスタグラムから一枚食べ物の写真を持ってきました。
司馬遼太郎・陳舜臣・金達寿3氏の対談集『歴史の交差路にて』に収録された『食の文化を探る』の一部を紹介します。
陳舜臣氏の話に出てきた周の太公望のエピソードです。
(太公望は)「分配の妙」を心得ていて、10人ぐらいの客を相手にうまく肉を分けたという話を周の文王が気に入り朝廷に連れて帰ったという伝説があるということです。
太公望については、釣り人説と料理人説があり、料理人は非常に尊敬されたといわれています。
どういうことかと言えば、「食べ物の恨みは怖いから、100人ぐらいの人間に、怒らさんように、同じように配分するという人間が偉い」(文庫185ページ)ということのようです。
「昔だったら、刀抜いて切り合いのけんかなんかやりかねないのをおさめるというのは、これは大変な役割」(文庫186ページ)です。
この陳氏の話は、政治や経済の根源的な性質を言い当てているように思いました。
例えば税制や社会保障制度の仕組みなど、国家の諸制度について、大学の教授や国会議員の皆さんや官僚の皆さんが日々葛藤しながら作り上げ、アップデートしていますが、単純明快な話にすれば、この世界の人々が『食べ物の恨み』を解消できるようにするのが政治や経済や社会の仕組みの役割ではないか、と思います。
自分の場合の『食べ物の恨み』といえば、10年前に勤めていた職場、というか業界に対してあります。
多分一生消えない恨みになるでしょう。
以前、税理士を目指していました。
当時の勤務先の経営者は、いわゆる『ブラック経営者』でした。従業員を搾取手段としてしか見ていない態度が伝わる人物で、当然人の入れ替わりも激しかった記憶があります。せ
後日談だが、そういうこともあって一度事務所を潰していたようです。
そこから(おそらく経営者の一存で)突然解雇さましたが、最終月の給与がいつまでも振り込まれなませんでした。
一人暮らしなので家賃も必要ですが、その家賃の支払いどころか食費すらヤバくなり、本当に飢え死にするかもしれない、何もしなければあの税理士に殺されると思いました。
その後、労働組合に介入してもらい、未払いだった残業代まで取ることができました。
税理士業界に限らず、『士業』は大なり小なりこの事務所のような『代わりはいくらでもいる』『無資格者=江戸時代の丁稚奉公=権利なんてない』という体質があります。
こういう話題が流れていれば、近年業界の志望者か減っているというのも当然な話です。
ここ20年の日本をみてきた限りですが、労働条件が劣ったまま放置し、精神論で取り繕う限り人材は来ませんし、外へ流出すると思います。
『構造改革』と称して強欲な輩が権力の中枢に侵入し、一人ひとりのささやかな生活、ひいては生命を守るための決まりごとを『岩盤規制』と称して目の敵にし、規制を緩和した挙句がいまの日本の社会であり、日本企業の衰退です。
この20年の流れは、この国の特に弱い立場の人々の『食べ物の恨み』が増すような政策・社会構造を目指し、この国の多数派がそれに賛同してきたということではないでしょうか。そして、それが間違いだったと気づくのは、取り返しがつかなくなってから、だと思います。残念ながら。

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