#タクシー運転手 が見た #光州事件 #518光州民主化運動


韓国が『第五共和国』と呼ばれる体制へ移行しようとしていた時期の1980年5月に韓国・光州市(光州広域市)で発生した『光州事件』を題材にした映画『タクシー運転手』を先日観た。

ちなみに、『光州事件』は韓国では『5・18光州民主化運動』『光州民衆抗争』とも呼ばれる。

1979年、当時の大統領朴正煕(パク・チョンヒ)暗殺から始まった、韓国の民主化運動『ソウルの春』と全斗煥(チョン・ドゥファン)による軍事クーデターの流れ。
全斗煥が実権を握り、金大中などの政敵を政治の表舞台から追放し、情報統制を敷いた。
一方、朴正煕が倒れた後、市民達は民主化を求める。
1980年5月、光州市でデモ隊が軍と衝突、軍は鎮圧の過程でデモ参加した市民達を暴力で屈服させようとしたが、それが火に油を注ぐ結果となり、ついに軍が市民達に銃口を向け、(一説では)200人以上を殺してしまったのである。

ソウルの貧乏なタクシー運転手(役:ソン・ガンホ)は、彼が滞納していた家賃に相当する10万ウォンの運賃に惹かれ、同業者から横取りする形で、東京から韓国入りしていたドイツのテレビ局記者(役:トーマス・クレッチマン)を光州市まで送った。
この10万ウォンは、ある条件をクリアすることで支払われることになっていた。
トラブルや衝突を繰り返しながらも、光州市内を走り、同業者達やデモに参加していた若者達と出会うことになった。
が、彼等が見たのは地獄であった。

劇中ではタクシー運転手・マンソプは2回光州入りするが、病院のシーンや光州駅をはじめとする市内のシーンを見比べて欲しい。
軍という国家が持つ暴力機構が市民達に牙を剥くことがどういうことなのか、想像がつくはずだ。

そんな地獄の中でも、彼等は市民達のため、それぞれの立場で彼等にできることをした。
映像を撮る、タクシーで負傷者の救助に向かう…
光州のタクシー運転手たちは、(これはさすが本職というべきか)光州の抜け道の地図をマンソプに渡したり、故障したタクシーを整備場に牽引し、食事を共にし、寝床を確保し、ソウルへの脱出の手助けをする。

なお、タクシーの色や車種などを、演出の都合上実際とは変えているようである。

しかしながら、チャン・フン監督の述べるように「ドイツ人記者とソウルのタクシー運転手が見た光州の話」「一人の人間の小さな心の変化」というテーマを頭に入れておくことが大事であると思った。
普通の人々の小さな決断と勇気が積み重なり何かが成し遂げられるといった、近くで見ていなければ知り得ない事柄」を「自分たちの話として考え」ること、が、どのような歴史的事件であっても「人間の集団」として個々人が生きていくためには大事なのだと思う。

私たちは、国家の暴力装置が市民達に銃口を向ける危険性を知り、コントロールしなければならないが、なによりもチャン・フン監督のメッセージをきちんと受け止めることがまず第一であろう。

人類社会の普遍性を彼の言葉から、この映画から見出し、皆さんが皆さん自身のものとして血肉化できるよう、皆さんの頭で考えてみてもいいのではないか。
そして、この映画が、日頃人々が省みることが少ないタクシー運転手の皆さんの励みになることを祈りたい。
筆者も仕事上日常的にタクシーに関わっているが、しんどい時はソン・ガンホ他タクシー運転手達の活躍を思い出したい。





これは余談だが、私服軍人役の俳優の悪役ぶりもなかなかのものであり、個人的には今後の出演作をチェックできるといいのではないかと思っている。
本題から外れるが、個人的には悪役として一番印象に残っているのは『マトリックス』シリーズのスミス役のヒューゴ・ウィーヴィングである。

参考:『タクシー運転手』
公式パンフレット、公式フェイスブック、公式サイト
http://klockworx-asia.com/taxi-driver/

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